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「開く」


初めて聞いた時から、心に残っている曲がある。

きれいなピアノの旋律が心に染み入ってくるようで、シンプルに「弾いてみたい」と思った。
けれど、唯一出回っている楽譜は、サウンドトラックの付属品としてついてくるものだけ。
そのサウンドトラックはすでに廃盤になっていて、手に入らない。
そこから、20年間…折にふれ探し続けていたその楽譜が、やっと手に入った。

久しぶりに、ピアノの蓋を開けた。
動かない指に、昔飽きるほど弾いた曲で勘を取り戻させる。
1曲弾き終えるごとに戻ってくる指の動きが、なんだかとても嬉しかった。

楽しい――そう素直に思えるような心地良さの中で、弾きたかった曲の一音一音を確認しながら奏でていく。
最近、そんな贅沢な時間を過ごしている。


もう一つ、贅沢だなと思う時間がある。
読書の時間だ。

今勤務する学校には、まさしくビブリオと呼ぶに相応しい司書の先生がいる。
友達に勧められた本について聞くと、その著者についての個人の見解と、蔵書のメモを手紙に書き、その著者の本の入門編のような2冊と、先生のおすすめの2冊の本とをセットにして渡してくれた。

そのうちの一冊に、『太陽のパスタ、豆のスープ』があった。
現代小説を読むのは、いつぶりだろう。
そう思いながら、ビブリオからの素晴らしいお手紙で抱いた感動に後押しされて、ページを開いた。

仕事に疲れた時にお勧めだと言われたのだが、まさかの出だしが別れ話…
先行きに不安を感じながらも読み進めていくと、なるほど確かに元気になれる本だった。
そして、所々で胸にそのまま入っていくような、そんな言葉との出会いがあった。
丁寧なコメントのお手紙のお返しに…と、本を読んだ感想を手紙にしたためた。


今歳…33歳になって2カ月が過ぎた。

今まで少し遠ざかっていたものを開き、瑞々しい新鮮な感覚と共に自分のすぐそばに置く。

人とのつながりに関しても…今まで固く凝り固まっていた部分に柔らかさを持たせて、違う感覚をもって、接し始めている。
それが、良い事なのか悪い事なのかは今はまだ正直分からないけれど…。

今歳は、「吐古納新の年」になる…そんな予感がしている。


司書の先生へのお手紙


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33yrs old -about life-


「なにがしあわせかわからないです。
ほんとうにどんなつらいことでもそれがただしいみちを進む中でのできごとなら峠の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく一あしずつですから。」

宮沢賢治作『銀河鉄道の夜』には、こんな台詞が出てくる。

星に包まれるような、読み終えたあとに何とも言えない切なさとそして煌めきが胸に広がるような、そんな物語をゆっくりと読んだ。


思い出したのは、この物語を好きだと言った、大切だった人のこと。

一生しんどいか一瞬しんどいかを考えて、別れを選んだあの27の時の選択を、今の私は、正しかったと心から思えている。

そう思える道をつくり、歩んできた自分自身に、自信を持てる。


今年、また「32歳、今歳が一番楽しく、幸せだった!」と思いながら33歳の誕生日を迎えた。

それからまだ一月半だけど、すでに「今歳が一番幸せ」と思えている自分がいる。


33歳の、私の周りには…ありのままの私を受け入れ、温かく包み込んでくれるような人たちが本当にたくさんいる。

誕生日を、特別なものにしてくれる人たちがいる。

「生まれてきて良かった」

そんな台詞が自然と口をついて出るような…そんな幸福の中で私は生きている。

峠の下りももう、怖くはない。

何があっても、揺るぎない居場所があると分かっているから。


教室で吐き気に襲われて、金木犀の香りに支えられていた私から、何もなくても、立っていられる私へ。

5年間の旅路の中で、出会った人たちとの絆が、星のように煌めいて、この先の路を照らしてくれている。

一あしずつ進むこの一歩が繋がる先に、これ以上の幸福があるのかは分からない。

けれど、今この瞬間が幸せ。

だから、ごちゃごちゃと考えるよりも、その瞬間を重ねていくだけでいい。


頭をすっきりと。

心に真っ直ぐに。


頭でっかちになりがちな私だから、今歳は、心が動くそのままに、少しの緩やかさを持って、過ごしていきたいなと思う。

そして、ずっとかわりなく思っていることだけれど、もらっている温かさには到底届かなくとも、温かさを与えられる人でありたい。


大切な人を、大切に…。


そうしながら、少しだけ、頑なだった殻を破ってみる。

銀河をわたる列車にのって知らない世界で過ごした、ジョバンニとカンパネルラのように。

どこまでも行ける切符は、もうこの手の中にあるのだから…。


33yrs old -about work-


今歳が一番幸せだった!
…と思いながら、誕生日を迎える。

そんな年が、もう何年続いているだろう。

そして、毎年思う。

「来年もきっと、そう言ってるんだろうな」

そして、必ずそうなっている。

私は、本当に幸福者だと思う。


そう思える理由を、今年は2つに分けて書こうと思う。
自分の、記録として残しておきたいから…

まず、仕事から…。


今年、異動が決まり…辞令がおりた3月31日…
私がまずしたことは、担任した教え子たちに異動すると言うことを知らせることだった。

私の担任期間は持ち上がった3年間だけ…
けれど、その3年間があまりにも学びが多く、温かいものだった。

子どもたちは、高校卒業を迎えた今なお、変わらずに慕ってくれている。

担任を3年したあとは、研究部という学校の学習活動全般を統括する部の主任と部長を務めて、また3年間…今度は大人相手の日々の中、全く違う観点や視点の中で、多くを学んだ。

その立場や周りの状況の関係から、所属した学年団は3つ…まったく違う色の3つの学年団で、それぞれの良いところを見せてもらった。

異動を機に、担任に戻れる!とわくわくして迎えた辞令だったけれど…
残念ながら今、私は担任には戻れていない。

こんなにも担任経験が乏しいのに、学年主任を務めることとなってしまった。

新しい学校で、知らない体制のなかで、『分からない』と不安しかなくて…
それでも何とか今、毎日を進んでいけている。

それは、今いる学年の先生方がすごく力があり、かつ協力的なことと、前の学校で、3つの学年を見たことが大きい。

こうして振り返ると、私は本当に大切に育てて貰ったんだなと思う。

そして、本当に恵まれた場所を用意してくれたんだな、とも思う。

前の学校で学んだことのすべてが、今のわたしを支えてくれている。

前の学校で出会った、教え子たち、同じ学年だった先生方、頼りになる管理職…そのすべてが、包み込んでくれている。


そして今、私が学年主任として身を置く環境は…

同じ学校から異動をしてきた、仲の良い二人の同僚。

2クラスだけの小規模学年。

私のやりたいようにさせてくれる、力のある先生方でつくられた学年団。

そこに所属する同期と、一緒に異動してきた姉的存在の先生。

以前同勤していた、信頼のおける管理職。

本当に恵まれているとしか言いようがない。むしろ、整いすぎてるくらいだ。


学年の廊下の外には満開の桜…
花吹雪が舞う毎日が続き、きっと来週にはこの薄紅色の景色も鮮やかな緑に変わっていっているだろう。

桜は、私にとって特別な花。

誕生花であり、元気の源。

慌ただしい日々の中、廊下から外を眺めては少し元気を取り戻していたけれど、
すべての花が散ってしまっても、きっと大丈夫。

そう、思える今の環境に、心から感謝している。

33歳も、子どもたちから、先生方から、そしてこの立場から、多くを学んでいきたい。

さくら

31




一月前、而立の最初の一年が終わった。

31歳になった。

30歳は、たくさんのことが前進した一年だったと思う。

まずは仕事…新たな学年団との毎日は、笑いに溢れていて、楽しい。
予定通り、今年度に入って立場がさらに変わり、責任はますます重くなったけれど、学年のストレスはほぼ0だから、本当に有り難いなと思う。
それでも、責任の重さに新年度始まって3日で泣いたけどね、苦笑。(もちろん、夜に家でですが(..))
でも、今のこの立場での仕事を本気出してやってみようと思ってる。

次に、友達…仲間達との絆はさらに深まった。
迷路挑戦、貴船の川床、徳島の島旅行、温泉旅行、スノボ、星旅行、ボルダリング、脱出ゲーム、げてもの道楽…数えきれないほど楽しい思い出がたくさん増えた。


毎歳、増していく温かさ…それはこの4月、特に強く感じられた。
誕生日当日にたくさんたくさん送られてきたメッセージ…
それぞれの国からお祝いを伝えてくれる留学時代の仲間たちも、いつもそばで支えてくれる日本の友達も、いろんな体験を一緒にしてきた遊び仲間達も…
一人一人想いを込めて伝えてくれたその気持ちが、本当に温かくて、幸せだ。
サプライズでケーキを用意してくれた人達もいる。
誕生日を過ぎても、直接お祝いをしたいと用意してくれるその気持ちが本当に嬉しい。

そして、どんな時も変わらずずっと支えてくれる大切な家族。
今歳のプレゼントは、ワンピース、カーディガン、鞄だった。
ある日、家に帰るとカーテンレールに綺麗にコーディネートされてかかっていた。
「特に欲しいものはない」という私に、何を贈れば喜んでくれるのかと考えて用意してくれたんだろう。
私は本当に恵まれてるなぁと思う。


28歳から「なりたい自分」の具体的な形を少しずつつかもうとしているけれど、未だに28歳までの時ほど強く描けてはいない。

ただ、年々大切なものがはっきりしていくだけだ。

けれど最近は、それでいい、と思っている。

大切なものを、大切に…そんなシンプルさが、何より必要なものなんだと思えているから。
それでいい。

自分に与えられているほどの温かさも、感動も、人に与えることが出来てる訳じゃない。

だから、少しでも多くの温かさを、彩る感動と物語を、返していかなきゃなと思う。


分厚い雲の奥で輝く満月の光のように、例えば届かなくても、自分の精一杯の力で相手に対して光を放ち照らしていたい。

でなきゃ、雲の切れ間があっても光を届けることができないから。


今この瞬間を、大切なものを、大切に…


31歳の一年、そんな風に一瞬一瞬を生きていきたい。




三十にして立つ


論語において、30歳は而立(じりつ)という。

その意味が、最近分かる気がする。
この半年間、気づくことやはっきりしていくことがたくさんあったから…

私の場合、自分で設定した人生の大きな区切りが28歳だった。
その時までにこうなりたいと思う理想があって、そこに向けて十数年進んできた。

28歳になり、私は次に目指す道を以前ほど強くは描けなくて…この二年間探し続けてきた。
ただ、心に決めた『自然体であること』だけは続けた。

そんな風に自然体で生きるなかで、少しずつの気づきが積もり積もって…やっとこの半年で形になってきた。

まだ、言葉にできるほどじゃないけれど、あと七ヶ月ある今歳の間には見えると思う。


空に薄い雲が広がっている。
蝉のかわりに涼やかな虫の音がささやいてくる。
季節はもう、秋。

今歳の夏はとにかく最初から最後まで体調が悪かった。

けれど、いろんなものを得ることができた。

まずは、運転スキルと安心…
運転しないうちにゴールドに輝いていた免許…。
GW前、病院のソファに座りながら母と話しているとき、心のなかで決めていた。
お父さんの負担が少しでも減るように、私が運転できるようになろう。
そして、夏休み中、作ったドライ部や友達に協力してもらったり、一人で特訓したりして、運転した。
少しだけ、心が楽になった。

次に、安定…
変わらないものがある。
信頼で築かれた、安心できる場所がある。
望んだ場所がここにあることに、気づいた。
それが、私の心をこの上なく安定させてくれた。

もうひとつは、新たな知識とより強くなった知識欲…
自由にいきるということの私なりの意味をつかみ、
十代から心に思っていた夢への本当の意味での第一歩を進めることができた。

そして…決意と絆。
言葉として受け取った勇気と想い、言葉にして預けた心の欠片。
変わらない、ずっと…。大切、それだけでいい。

ただ、そこに存在(いて)くれるだけでかまわない。
そんな人たちが、いる。

大切なものが増えていく…私は、幸せだ。
時間に信頼を織り交ぜて紡いだ絆の一本一本が、切れない糸となって今の私を支えている。

だから、私は一人で望むままに立っていられる。


吾十有五而志於學、三十而立。

志学から十五年、而立の歳にようやく立つことを知った。
ここから十年、不惑までの道のりを、楽しんで生きたい。

大切なものを、大切に…。




プロフィール

*Ayaka*

Author:*Ayaka*
Name:あやか
Age/Sex:29/Female
Location:
Osaka, Japan/Bangkok, Thailand

+About Ayaka+:
大学院留学から帰国し、
現在日本で英語教員をしながら、精進中です。
最近はまっていることは、お菓子作りとビリヤード。
バンコクのど真ん中で大学院生をしてました。
タイ語はあまりできません。
ただ、ぼられない様にしていたら、ショッピング時だけ流暢に話せるようになりました、笑。
ちなみに院では英語ばかり使っていました。

どうぞよろしく


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